危ナイ隣人
あくび混じりに言うので運転席を盗み見ると、なんか、すごく疲れた顔。



「……もしかして、けっこう無理して起きてくれた?」



髪の毛セットしてないのも、ほんとに疲れててギリギリまで寝てたからなのかも……。



不安になって、無意識のうちに膝の上で拳を作っていた。


そんな私を横目に見たナオくんの左手が、不意に私の頭に載せられる。

私の髪をくしゃっと撫でたナオくんは、少しだけ笑って、また手をハンドルに戻した。



「…………」



……ずるいよ。

何にも言わないのも、不意打ちで大人の余裕を見せるのも。


私だけがまた、ドキドキしちゃうんじゃん……。



「今日、お墓参りから帰ったら、ナオくんち行ってもいい? 晩ご飯、一緒に食べようよ」


「ん? まぁ……うん、いいけど」


「とびきり美味しいの作るから。出来るまで、ナオくんリビング立ち入り禁止だからね」



今からお墓参りに行って、帰りついでに晩ご飯食べるには時間が微妙だし、かと言ってそれまで時間を潰すなんてお疲れ気味のナオくんには酷だし。


だったら、真っ直ぐに家に帰って、ナオくんが休んでる間にご飯を作るのが1番なんじゃないかって思ったんだ。

それだけじゃいつもと変わんないかもだけど、ナオくんが休むことが最優先って考えたら、けっこう悪くないんじゃない?



「立ち入り禁止か。俺んちなのに」


「今日は、私が法だから」


「そうだったな。学年9位の秀才だもんな」
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