危ナイ隣人
「言い方……」


「閣下の命が下るまで、大人しく寝室に引きこもらせてもらうわ」



真っ直ぐに前を向いたまま、ふざけた口調とは裏腹に穏やかな声色で言うので、私もフロントガラスに向かって頷いた。





途中、コンビニに寄って軽くご飯を済ませてお花屋さんにも寄って、お墓へは1時間半ほどで着いた。


車を降りるなりぶわっと強い風が吹いて、辺り一帯を冷たい空気が包み込む。

それでも、真上に昇る太陽の光はあったかくて、何だか不思議な感じ。



「じゃあ、行ってくるね」


「……え? 俺、置いてけぼり?」


「あ、いや……だって、行ったってつまんないでしょ? それなら、ここでタバコでも吸ってた方が」


「行くよ。そんだけ荷物あったら、バケツ持てねーだろ」



う、確かに……。


大きな鞄と、さっき買った花束。

ここに、水の入ったバケツまで持つとなると……確かに、1回では持てないかも。



「車で待ってたって暇だし。それに、バケツの水ぶちまけるなんてオモシロイ光景、1人で披露させんのも可哀想だしな」


「絶対にぶちまけないし!」



1人でも、ちゃんと分けて運ぶし!

一気に全部持とうなんて横着しないし!


ふん、でもついてきてくれるって言うからには遠慮なんてしないからね!



「行こっ」



お花を抱えて、しっかり覚えてしまったお兄ちゃんの眠るお墓までの道を歩く。
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