危ナイ隣人
「待って!」



体を翻したナオくんの服の裾を、咄嗟に掴んだ。


振り向いたナオくんは困惑気味で、慌てて手を離す。



「私が取ってくるから、ナオくんここにいて」


「は? いいよ、どうせすぐそこだし」


「ダメ。私が行くから、鍵貸して」



さすがに甘えてばっかりはいられない。


半ばふんだくるようにして鍵を受け取った私は、早歩きで車へと戻った。



「あった」



運転席のロックを開けると、助手席との間のポケットにライターを見つけた。

昨日100均で見たようなカラフルなのじゃなくて、金属の、重厚感あるやつ。



こういう小物一つひとつ、結構オシャレなんだよなー。


それなのに、気を抜いたらすぐに家が散らかっちゃうんだから、物が可哀想だよねぇ。



再び車の鍵をロックして、お墓まで戻ろうとしたところで、コートのポケットに入れていたスマホが鳴った。


反対のポケットにライターを突っ込んでスマホを取り出すと、着信はお父さんからだった。



「もしもし?」


『もしもし、お父さんだ』


「うん」



お墓に戻る足を止めて、空を仰ぐ。

7年前とは違って、空には雲ひとつない。



『今日、墓参りに行ってくれたんだったよな』


「うん、今ちょうどいるよ」


『そうか』



前の電話で、お墓参りに行くことは伝えていた。

お隣さんが連れて行ってくれるってことも、一緒に。
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