危ナイ隣人
『すまんな、帰れなくて』


「仕方ないよ。国内にいるならまだしも、外国にいるんだから」


『父さんが謝ってたって、伝えといてくれ。来年は必ず帰るからって』


「あはは、了解」



帰ってきたかったんだろうなぁ、2人とも。


お父さんからのメッセージ、ちゃんと伝えないとね。



「ごめん、お隣さん待たせちゃってるからあんまり長話出来ないの」


『あぁ、そうか。その……お隣さんにも、お礼を言ってたって伝えておいてくれ』


「わかった。またね」



通話を切って、今度こそ歩き出す。

敷地内は小さな白い石が敷き詰められていて、足をとられそうになるから少し危険だ。


それでもなるべく急ぎ足で戻った時、



「ナオくん……?」



また強い風が吹き、髪の毛が風に舞い上がって、前方に佇むナオくんの姿を隠した。


指で髪をかき分けると、ナオくんは私の姿に気付いたらしく、片手をパッと挙げる。



「遅かったな。すぐに見つかんなかったか?」


「ううん、違うの。お父さんから電話かかってきてて、ちょっと話してた。待たせてごめん」



そうだ、伝言預かってたんだった。



「お父さんが、ナオくんにお礼言っといてって。改めて、ありがとね」



ペコっと頭を下げると、また風が吹いた。


都度髪がなびいて、いよいようざったい。

まとめてこればよかったなーなんて思いつつ、風除けの中のろうそく立てにろうそくを挿す。
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