危ナイ隣人
「ろうそくの火、お願いしていい? 私、あのライターの使い方わかんない」


「え……あぁ」



ポケットからライターを取り出して、ナオくんに差し出す。


ナオくんはそれを受け取って、慣れた手つきでろうそくに火を灯してくれた。



お線香に火を移して、墓前に手を合わせる。



久しぶりだね、お兄ちゃん。

今日はね、伝えたいことがたくさんあるんだ。


1月の誕生日で、17歳になったよ。

あの頃はまだ10歳だったのに、びっくりだよね。



お父さんとお母さんが海外に行って、一人暮らしを始めることになったことは……去年のお盆に来た時に、報告したよね。

色々失敗しながらだけど、なんとかやっていけてるよ。



もうすぐ3年生になるけど、進路はまだ決めてないんだ。

勉強は嫌いじゃないから大学には行きたいなぁとは思ってるんだけど、これといって学びたいことがないから困ってるんだよね。


お兄ちゃんは、どうしてあの大学の経済学部を選んだの?

そういえば、聞いたことなかったよね。

あの頃はまだ、受験が何なのかさえもよくわかってなかったから、しょうがないのかもしれないけど。

……色々、相談に乗ってもらいたかったなぁ。



そうだ。実はね、大ニュースがあります。


なんと私、初めて好きな人ができました。



えへへ、恥ずかしいな。

こんなこと、お兄ちゃんに報告する日が来るなんて思ってもみなかったな。
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