危ナイ隣人
結構強めに叩いたつもりだったけど、扉の中からはなんの反応もない。

もう1回、ドンドンって叩いてみても、やっぱりうんともすんとも言わない!



「嘘でしょ」



疲れてることはわかってたけど……こんなに熟睡するほどだったの?


え、どうしよう。このまま寝かせておく?


いや、でも……お昼あんまりちゃんと食べてないから、せめて晩ご飯はしっかり食べてほしいし。

変な時間に起きて寝られなくて、明日の仕事に支障が出たら大変だし。



「……入るなって、言われてるわけじゃないもんね」



何かに言い訳するように呟いて、私は初めて、寝室のドアノブに手をかけた。



──ガチャ……


6畳の部屋のカーテンは空いていて、満月手前の月明かりが青白く差し込んでいる。


月に照らされた部屋は、私が見てきたナオくんを思うと、想像以上に綺麗だった。


扉と対角のところにシングルサイズのベッドがベランダと並行にあって、その枕元にはボックス型のサイドテーブル。


ベッドの足元には、ハンガーがたくさんかかったラックがあるけど……上からバサってかけられた服が、数枚。

面倒だったんだろうな、うん。



「失礼しまーす……」



恐る恐る足を踏み入れる。

月明かりを頼りに、ベッドとの距離を縮めた。


男の人の寝床に入るって、こんなに緊張するものなの?

部屋が静かだから、余計に心臓の音が大きく感じるよ。



「ナオくーん。ご飯できたよ……っ!?」



毛布にくるまる影に顔を寄せると、すうすう寝息が聞こえて心臓が跳ねた。
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