危ナイ隣人
だ……ダメだ! 心臓に悪い!

早く起きてもらわなきゃ、私が保たない!



毛布を頭までかぶった……というより、ベランダ側に背を向けてまるまっているナオくんに手を伸ばそうとした時、



「……ん?」



シーツと枕の間に、何かが挟まっていることに気が付いた。

相変わらず、ナオくんはすやすや眠ってる。



何だろ。暗くてよく見えないけど、四角い……紙?



それに手を伸ばしたのは、起こした拍子にグシャッてなったら気の毒とか、そういう、なんてことない理由で。

どうして枕元に紙が挟まってるのかなんて、考える理由もなくて。

回収したら、サイドテーブルの上にでも置いといてあげようなんて考えで。


手にとった少し厚手のその紙が真っ白だったから、ひっくり返したのは反射みたいなもので。

そこに、特別な理由なんてなかった。



ない、はずだった。



「……え?」



7年前の今日、空は厚い雲に覆われて、月なんて見えなかった。

低いところに構える分厚い雲から、雪は容赦なく降り落ち、やがて街を真っ白に染め上げたあの日。


お兄ちゃんは、その雪を赤く染めた。



「なん……で……」



ナオくんの枕元から手にとったそれは、写真だった。


7年前とは違って明るく差し込む月明かりが、写真をぼんやりと、だけど鮮明に照らしている。



今よりもずっと若くてあどけなさの残るナオくんが、写真の右側に写っている。

左耳にピアスをつけた制服姿のナオくんは、肩を組まれて顔をしかめていて。
< 202 / 437 >

この作品をシェア

pagetop