危ナイ隣人
3.

届カナイ心

妹の私から見ても、お兄ちゃんはかっこよかった。


私と同じ色素の薄い色は軽やかに風に舞って、雑誌なんかで見るモデルみたいに大きな目はいつも柔らかく細められて、あったかかった。



小学校に通う中で、周りが色恋に浮き足立ち始めた時。

周りの友達に、



「あかねちゃんのお兄ちゃんってかっこいいよね」

「ぜったいモテモテだろうな〜」
 


なんて言われて、自分のことみたいに嬉しかった。



毎年大量に持って帰ってきていたバレンタインのチョコレートは、高校2年生を境に一つになった。

友チョコの文化しか持ち合わせていなかった私が、



「友達、1人しかいなくなっちゃったの?」



って真剣に聞いたら、お兄ちゃんは大きな口を開けて笑ってたっけ。


当時お兄ちゃんは何も言わなかったし、今考えてみても彼女がいる素振りはなかったけど。

──あのチョコは、一体誰からのものだったんだろう?



お兄ちゃんが通っていた高校は県内でも有数の進学校で、紺色のブレザーの胸元には、何やらかっこいい校章がついていた。

私服の時ももちろん素敵だったけど、カッチリとした制服は、お兄ちゃんによく似合っていたと思う。

──写真の中のナオくんも京香さんも、同じ校章がついた制服を着てる。



頭のよかったお兄ちゃんは、教えるのだって上手だった。

私が宿題でつまずいた時、解き方をわかりやすく教えてくれた。

──ナオくんが教えてくれた時と同じように。
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