危ナイ隣人
「付き合ってもらってんのはこっちなんだから、意味不明なお礼とかいらないの。むしろこっちがありがとうって言わなきゃいけない立場でしょ」


「だ、だからって普通、チョップする?」


「んー、まぁそれは愛のムチってことで」


「絶対適当に言ってるでしょそれ」



ジト目で見る私を無視して、パッケージから取り出したシャボン玉のボトルとストローを持って立ち上がった真帆。


観察していたくるみと観察されていた塚田くんにもそれぞれ手渡すと、辺り一帯はいつしか、玉虫色の泡沫に包まれた。



「見て、すっごくおっきいの出来た!」


「こっちはひと吹きでたくさん出たよ」



西日に染められたオレンジ色の世界を、気ままに揺蕩(たゆた)う幾多のシャボン玉達。



なんかいいな、シャボン玉って。

久しぶりにしたけど、綺麗だし、手間かかんないし。

  
刹那的に消えてしまうものだけど、この一瞬はきっと酔生夢死なんかじゃないね。

だってこんなにも、楽しんでる私がいるんだもん。



「ちょ、茜! 見てこれ!」


「ん?」


「めっちゃ大きいの出来た! すごくない?」



私を呼んで、キラキラ目を輝かせるくるみ。

彼女の元を離れた大きなシャボン玉は、ふわふわと空に舞い上がっていく。
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