危ナイ隣人
……と、その隣で静かにシャボン玉を生成していた塚田くんが、更に大きなものを放ってしまった。


ちょっとびっくりするくらい、大きいやつ。



「俺の勝ち?」



普段は表情筋がお休みしてるくせに、こんな時に限ってニヤリと不敵な笑みを見せた塚田くん。

それを向けられたくるみはというと……



「何今の笑み! 悔しい! けど絵になるから何も言えない! でも悔しい! 勝ちとかないのに!」


「くるみってば、感情がマーブルってるね」


「マーブルってるって表現、初めて聞いた」


「私も初めて聞いたし初めて言った」


「真帆もかーい」



大丈夫。

自然だ。

笑えてる。

ちゃんと楽しい。

 
彼が私の世界のすべてじゃない。

ううん。初めての感情や色んな展開に戸惑って侵食しようとしてたところを、ここにいるみんなが……ついでに近藤が、たった少しの時間で食い止めてくれたように思う。

私は本当に、友達に恵まれてるなぁ。


おかげで、今の私の心は随分軽い。



だけど、同時に怖くもなるんだ。


みんなと別れて、1人になるあの時間が。

あのマンションの404号室で、隣に住んでいるはずの人に会えないことが。


不安を掻き消してくれるはずの人に背を向けられたあの瞬間が、ふとした瞬間に思い起こされるの。
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