危ナイ隣人
その笑顔が──あの夜見た、写真の中の姿と重なって、胸の奥が痛くなる。



「いやー、びっくりだよー。取引先からの帰りにたまたま堤防を歩いてたら、茜ちゃんがいるんだもん。嬉しくて、思わず大声出しちゃった」



そうだ……京香さんも、お兄ちゃんのことを知ってるんだ。



「ごめんねー、友達と遊んでたところ邪魔しちゃって」


「い、いえ……」


「放課後に河川敷でシャボン玉かぁ。いいなぁ、青春って感じ」



なんで何も言わないんだろう。

なんで黙ってるんだろう。


あなたのお兄ちゃんと同じ高校で友達だったって、たったそれだけ、簡単なことなのに。



「若いってそれだけで輝いて見えるから不思議だわー。あ、ねぇ、茜ちゃんの学校は──」


「──あの」



京香さんの言葉を遮った声は、自分でも驚くほど強張っていた。


その様子を察知したのか、目を瞬かせた京香さんが不思議そうに私を見ている。



ナオくんは何も言ってくれなかった。

ナオくんにはずっと会えないでいる。


今日ここで、京香さんに会ったのは本当に偶然だと思うけど、ナオくんにかかる橋を向こうから断たれた現状で、頼れるのはこの人だけだ。
< 219 / 437 >

この作品をシェア

pagetop