危ナイ隣人
許セナイ過去
「ごめんね、中々時間とれなくて」
壁に手をついてグレーのパンプスのストラップを外しながら、申し訳なさそうに眉を下げる京香さん。
彼女を招き入れた私は、上がり框の先で小さく頭を振った。
「いえ。むしろ、忙しい京香さんの時間をとらせちゃって、すみません」
「それは気にしないで。最近仕事ばっかりで参ってたから、茜ちゃんに会うだけでいい気分転換になるわ」
柔らかく微笑んだ京香さんは、表情と同じトーンでそう言った。
昨年末、東京への異動の話が出ていた京香さんだったけど、会社の都合でその話が1年延びたとか何とか。
異動を受けることに決めていたという京香さんは、出世を念頭に置いて今いる部署で重要な仕事を任されるようになったらしく。
ゴールデンウィークに入った5月に、ようやく私に割く時間を確保できたらしい。
前に会った時から、1ヶ月近く経っている。
仕事がどういうものかはよくわかんないけど……社会人って大変そうだなぁ。
「それで……茜ちゃんが聞きたいのは、直也と──圭太の話だったよね?」
ソファに腰を下ろした京香さんは平坦な声色のまま、少しだけ首を傾けた。
彼女が身にまとう白いブラウスの肩から、黒い髪がさらりと流れる。
壁に手をついてグレーのパンプスのストラップを外しながら、申し訳なさそうに眉を下げる京香さん。
彼女を招き入れた私は、上がり框の先で小さく頭を振った。
「いえ。むしろ、忙しい京香さんの時間をとらせちゃって、すみません」
「それは気にしないで。最近仕事ばっかりで参ってたから、茜ちゃんに会うだけでいい気分転換になるわ」
柔らかく微笑んだ京香さんは、表情と同じトーンでそう言った。
昨年末、東京への異動の話が出ていた京香さんだったけど、会社の都合でその話が1年延びたとか何とか。
異動を受けることに決めていたという京香さんは、出世を念頭に置いて今いる部署で重要な仕事を任されるようになったらしく。
ゴールデンウィークに入った5月に、ようやく私に割く時間を確保できたらしい。
前に会った時から、1ヶ月近く経っている。
仕事がどういうものかはよくわかんないけど……社会人って大変そうだなぁ。
「それで……茜ちゃんが聞きたいのは、直也と──圭太の話だったよね?」
ソファに腰を下ろした京香さんは平坦な声色のまま、少しだけ首を傾けた。
彼女が身にまとう白いブラウスの肩から、黒い髪がさらりと流れる。