危ナイ隣人
そんな彼女の前に、アイスティーの入ったグラスを差し出しつつ、顎を引いた。


彼女は、どうして私がそんなことを尋ねるのか、ということを尋ねてはこなかった。


私達の間であったことを、ナオくんが京香さんに話しているかはわからないけど……話してなかったとしても、京香さんは恐らくわかってるんだと思う。



「直也から口止めされてる……って言ったら?」


「……え?」



予想外の返答に、床に腰を下ろそうとしていた私は動きを止める。

というより、無意識のうちに止まった。


ここに来て、そんなことを言われるなんて思ってなかったから。



「もしそれが本当なら……京香さんはその要望を飲みますか」



数えるほどしか会ったことのない私と、長い付き合いのナオくん。


どっちが優先されるかなんて、そんなの……火を見るより明らかだ。



「飲む、べきなんだろうね」



アイスティーに口をつけて、伏せられた睫毛がとても綺麗で、思わずドキリとしてしまう。



「だけど、私は、私の知ってる全てを話すつもりで今日ここに来たよ」



全開にしたベランダから強い風が吹き込んでくる。


時刻はおやつの時間を過ぎたあたり。

傾きかける太陽は、それでもまだ眩しい。
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