危ナイ隣人
あの瞬間、なんて叫んでたのか、もう自分でもわからない。


とにかく衝撃で、嫌で、怖くて、脱ぎっぱなしにしていたスリッパを引っ掛けて外に逃げたことだけは何となく覚えてて。



「え……何」



ドアの隙間から顔を覗かせ、不審そうに眉を寄せるお隣さんの顔を見た時、そこでようやく自分が403号室の扉を必死に叩いていたことに気が付いた。


血の気がサッと引いて、慌てて扉から飛び退く。



や、やばい!

危険人物だって、さっき認識したばっかじゃん! 何やってんの私!


背中に冷や汗が伝ったのは、ヤツと遭遇してしまったからか、頼る相手を完全に間違えてしまったからか……。



「……ミヤマさん、だっけ?」


「えっ。あ、はいっ」


「こんな時間に何、そんな際どいカッコして。誘ってんの?」



感情の読み取れない平坦な声で、ちょっと……いや、かなり面倒くさそうに私を見下ろす彼。


キワドイカッコ?


言葉の意味をすぐに飲み込めなくて、思わず首を傾げた。

すると、お隣さんは表情一つ変えずに私の胸元を指差して──



「──っ!!!」



思わず叫びそうになったのを、すんでのところで飲み込んだ。
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