危ナイ隣人
その時立ち上がった直也はさ、不快感を隠そうともせずに圭太を睨んでたけど……トレイを持って、何も言わずに返却口の方へと歩いて行ったわ。


一触即発の空気を乗り切って、ホッとした……のも束の間。



『まだ残ってんじゃん。もったいないオバケ出るぞー』



向けられた背中に呑気な声を投げかけたの!



なーにがもったいないオバケよって思わない!?


子どもか! って怒鳴りつけそうになったわよ。



でも、慌てる私をよそに、直也は大人だった。

っていうか、面倒だったんでしょうね。


足を止めることも一瞥することもなく、食堂から姿を消したわ。



『いつまで突っ立ってんの京香。座れば?』



相手にされなかったことを全く気にする素振りもなく、これまた呑気な声で言ってきてさ。


緊張状態からやっと解放された私としては、なんかプチっときちゃって。



『座ればァ? じゃないよバカ! 何、馴れ馴れしく喋りかけてんの!』



さっきまで直也が座ってた席に、勢いよく腰を下ろす。


憤慨する私を前にしても、圭太は口角を上げたままだった。
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