危ナイ隣人
引き止めようとした時には、もう遅かった。



『あっれ、真木クンじゃーん』



物々しい空気に似つかわしくない声色で直也を呼んで、その肩に手を乗せた圭太。


あんな風に頭を抱えたの、後にも先にもあの時だけだわ。



心底驚いた様子の直也と、眉間にシワを寄せた周りの男達。



『なんでお前が……』


『なんだテメェ』


『俺? んー、そうだなぁ。こいつのトモダチ的な』


『は、誰がトモ……むぐっ!』


『だから急で申し訳ないんだけど、こいつ借りてくわ。どうしても行かなきゃなんないトコあるんだよ』


『あ、おい勝手に……!』


『別にいいだろ? アンタらの喧嘩に、こんなガキ必要なさそうじゃん』



背を向けてた圭太の表情は見えなかったけど、声の調子から察するに……冷ややかな笑みでも浮かべてたんじゃないかしら。



呆気にとられる面々を置いて、振り解こうとする直也の手を強引に引いた圭太が戻ってきた。





『っ離せよ!』



男達の姿が見えなくなったところで、直也が圭太の腕を力ずくで振り解いた。


手が離され、すごい形相で睨まれても、圭太は臆することなく直也を見据えてた。



『なんっ……なんだよお前は! 俺の周りをうろちょろしやがって……!』


『うろちょろって、心外だなー。学校が同じなら会うこともあるし、今回はほんとに偶然だし』
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