危ナイ隣人
『わかった。今すぐ向かうよ』



電話越しの圭太の声は冷静で、私の確証のない確信を確信のまま受け止めたようだった。



『京香、お前は来るなよ』


『なんで!? 私も行くに決まってんじゃん!』


『何言ってんだよ、危ないかもしれないだろ』


『だからって何もせず待ってろっての!?』



前を向いて、未来を歩き始めた直也。

そんなあいつにとって、今の状況がいいものなはずないのに。



『そんなの嫌よ! 私だって、あんたが思ってるのと同じくらい直也が大事!』



私が食い下がると、電話口の向こうからは深い溜め息が聞こえてきた。



『……状況がわかんねーから、とりあえず落ち合おう。場所は駅近くのコンビニ付近だったよな?』


『うん、そう聞いた』


『多分俺の方が早いだろうけど……万が一先に着いても、俺が着くの待っててよ』


『……わかったよ』



突っ走っちゃう私の性格をよく知ってて、圭太はそう言った。

それがわかったから、不本意ながらも私は顎を引いたわ。


あんまり話してる場合でもないから、じゃあ後でね、と電話を切ろうとしたところで、



『京香』



圭太の声が私を呼び止めた。


下そうとしていた腕を持ち直して、何? と聞き返す。
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