危ナイ隣人
どこかのタイミングで工事現場の立ち入り禁止のフェンスが薙ぎ倒されて、それでも男達は直也を痛めつける手を止めなくて……。

……弾き飛ばされた拍子に、フェンスの中で保管されていた鉄パイプが倒れたの。


その下敷きになりそうになった直也を、駆け付けた圭太が庇って──。




圭太のご両親に、直也は頭を下げ続けた。


自分のせいです、自分がいなかったら圭太は死なずに済みました、本当にごめんなさい。

死んで償います……って。


病院や警察の事情聴取、葬儀なんかで何度も顔を合わせたけれど、今にも消え入りそうな声で謝り続ける直也を……あなたのご両親は一度も責めなかったわ。



小さくなって自宅に戻った圭太を前に、直也が頭を下げた時よ。


目に大粒の涙を溜めて、お母様が言ったの。



『顔を上げて。あなたは真っ当に生きようとしただけでしょう』

って。



『圭太からよく話は聞いていたわ。仲良くしてる後輩がいるんだって。ちょっと捻くれてて、でも本当は誰よりも純粋で、弟みたいなヤツなんだって』



直也と一緒にお宅にお邪魔していた私にもわかるほど、その眼差しは優しくて、恨みなんかどこにも読み取れなくて。

それは、隣に座っておられたお父様も同じだった。
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