危ナイ隣人
『自分と同じ方向に歩くことを選んでくれたことが嬉しい。もしまた道を間違えそうになったり見失ったりした時は、全力で助けてやりたいんだって──あの子は、その言葉通りに行動したのよ』



頬を濡らしながら、お母様が柔らかく微笑んで。 

今度は、お父様が口を開いた。



『死んで償うなんて、馬鹿げたことを言うな。真木くん、君は圭太が命を懸けて守った存在なんだぞ』


『……っ』


『もちろん……圭太がいなくなってしまったことを、受け入れられたわけじゃない。でも、私達は君を恨んでいないし、今後恨むこともないだろう。

それでも、私達に申し訳ないと思うなら……圭太の死の原因が自分にあると思うなら。一生をかけて、圭太の思いに報いてくれ』



ふっと空気の震える気配がして、隣を見ると直也の頬を涙が伝っていた。



『精一杯生きなさい。君を大切に思っていた圭太の分まで、投げやりにならないで、希望を持って。それが、一番の謝罪になるから』



圭太が死んで、全ての感情を失っていた直也の瞳に、生気が戻った瞬間だった。


そして、お父様は私にも視線を向けてくれたわ。



『高倉さん。君も、自分を責めないでくれ』


『え……』


『あの時、圭太ではなく警察に連絡していたらって……そう思ってるんだろう?』
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