危ナイ隣人
「新聞──とかねぇよなぁ、このウチに」



部屋をざっと見渡して、新聞をとってる家には見えないと判断したらしい。


ご明察。お父さんは毎日読んでたけど、私は一度も読んだことないです。



「恨むなよ、不可抗力だ」



ため息まじりにそう言って、お隣さんが手にしたのは──机の上に置きっぱなしだった雑誌。


それをくるっと丸めて──あとは、新聞と同じ要領で。



あ゛ーーーっ! 今日買ったばっかりのsixteenがぁあぁぁっ!


なんて思いながらも、断りを入れられていた以上……いや、こんなめちゃくちゃなお願いを聞いてもらっている以上、言えるわけがない。



「ほら、仕留めたぞ」


「あっ、ありがとうございます……!」



さすがと言うべきか、ヤツは一撃で天に召された。生粋のスナイパーだわこの人……。



「ティッシュどこ?」


「あ、ここです」



棚の上に置いてあった箱ティッシュを手渡すと、すぐさま5枚ほど抜き取って、雑誌と床との間にいるヤツを回収してくれた。


ヤツへの私の恐怖意識が伝わっていたのか、そこまでしてくれるなんて。

もしかして、意外といい人……?
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