危ナイ隣人
隣に座って少しして、口火を切ったのはナオくんだった。



「京香から聞いたよ。……全部、聞いたんだろ?」


「全部かどうかはわかんないけど……京香さんが知ってることは、ほとんど話してくれたと思う」


「そうか。……悪かったな、ずっと連絡無視してて」


「うん」


「お前が圭太の妹だって気付いてからもずっと黙ってたことも……悪かった」


「……うん」



ナオくんの声で紡がれるお兄ちゃんの名前は、少しだけ、私の知らない世界に触れさせてくれたように感じた。



「ナオくんは……今でもお兄ちゃんを死なせたのが自分だって思ってるの?」


「思ってるも何も、それが事実だからな。俺と関わってなかったら、圭太は死なずに済んだ」


「お兄ちゃんを殺したって十字架を背負って、ずっと生きてくの?」


「あぁ、そうだ。そうあるべきだと思うし、そうでないと生きていけない」



右隣に座るナオくんの方を振り向くけど、ナオくんはけしてこちらを見ない。


朝だと言うのに暗い四阿の外を、真っ直ぐに見据えている。
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