危ナイ隣人
笑ってる? 泣いてる?

怒ってはないと思うけど、自分でもわかんないや。


ただ、胸の奥の方がじんわり熱い。



「お兄ちゃんが教えてくれたの。自分を……自分が知るものを信じる大切さを」


「…………」


「だから私は、頑張って生きてる今のナオくんの姿を信じる」



十字架を背負って、人のために懸命に生きるあなたを。


あなたが背負う過去を理解して、これからの道を歩いていきたい。


だから私はナオくんに会いに来た。



それなのに──どうして目を逸らすの。



「……悪いな、茜」



望むものの真逆の言葉を放ったナオくんは、おもむろに立ち上がる。


座ったまま見上げた背はやっぱり高くて、手を伸ばしてもその背中には届かない。



嫌だ。



「茜が俺のことをどう思ってくれてても、俺にはそれを受け止める強さなんかねぇんだ」



嫌だ、いやだ。



「お前が何も知らない頃は、まだ平気でいられたんだ。何も知らないお前相手に……ただの隣人として接することが出来た」



でも、とナオくんの絞り出すような声が鼓膜を震わせる。



「お前の中で俺と圭太が繋がった時、自分でもびっくりするくらい……怖かったんだ」
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