危ナイ隣人
ぽつぽつと四阿の屋根を雨が濡らし始める。


外に広がる灰色の背景にナオくんが同化して、輪郭さえもよく見えない。



「最低だって、自分でも思うわ。自分に都合の悪いことバレたらトンズラとか、仮にも大人のやることじゃねぇよ」


「それ、は……」


「騙されて1番傷ついたのはお前なのにな。俺が被害者ヅラなんてする資格ないこともわかってる」


「ナオく、」


「わかってんのに……ごめん。やっぱり俺は、俺の向こうに圭太が見え隠れする状況に耐えられない。

俺がお前の兄貴を死なせたことを、何度だって突きつけられるようで」



ナオくんの声は、雨音に混じって震えてた。


こんなナオくんを私は初めて見るから、どうしていいかわからない。



「情けなくて、弱くて……こんな最低なやつが、覚悟もねぇくせに圭太の忘れ形見の傍にいちゃダメだったんだよ」



そんなことない。


そう言いたいのに、喉が熱くて声が出ない。



「ごめんな、茜。俺、もうあのマンションから出てくから。もう二度と、お前の前にも現れねぇようにするから」
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