危ナイ隣人
すらりと長い指が、カフェオレのボタンを押す。


ガコンと鈍い音がして、それを取り上げた塚田くんの横顔は綻んでいて。



「嬉しかった。俺も同じように思ってるから、なおさら」



全人類に聞きたい。


私はドラマか映画の中にでも入り込んでしまったんでしょーか。

さしずめ、少女漫画が原作の。


普段クールなイケメンが、こんなに柔らかく優しく笑うとか。



「塚田くん、芸能界のオーディション受けてみたら?」


「どうしたの、突然。そのセリフ、そっくりそのまま返したいんだけど」


「やだ、返さないでよ」



即座に返答して、顔を見合わせて、また笑って。


ケラケラ笑いながら購入したのはミルクティ。



肩を並べて真帆達の元へ戻ると、3人が3人とも勉強のやる気を失っていて。

笑顔も束の間、私達はすぐに鬼にならざるを得なかったけど。





勉強をしている間はよかった。


テキストに向き合っている間は、問題のことだけを考えれば済むから。
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