危ナイ隣人
だけど、マンションを出入りするときは必ず403号室の前を通らなきゃならなくて、そのたびに無機質な扉に意識が集中して。



マンションを出て行くといったナオくんの動向はわからない。


元々、エントランスの403号室のポストには名前がなかったし、玄関先も同じ。


引っ越し業者を見かけることもなければ、ガレージに車が停まっているところも見たから、一応まだナオくんは隣人のはずなんだけど、一度たりとも姿を見ることはなく。



でも、ナオくんは本当に、このマンションを出て行くつもりなんだってことはわかる。


完全に拒絶されたあの日からそんなに時間も経ってないし……多分今頃、新居を探したり荷物まとめたりしてるんだろうって。


時間があると、そんなことを考えちゃう。

そんな自分もまた、嫌だった。





──キーンコーンカーンコーン……


校内にチャイムが鳴り響き、ピリピリと肌で感じていた緊張感が一気に解ける気配がする。



「後ろの席の子、答案用紙集めてー」



ここ数日間で耳にタコが出来るほど聞いたセリフは、もはや誰も意識を向けずにただ答案が集められる。
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