危ナイ隣人
「お母さんったら、まだ言ってんの? 今更言ったって仕方ないでしょー」



でも、と心配そうに続けるお母さんを適当に宥め、電話を切った。



大手家電メーカーに勤めるお父さんの海外赴任が決まったのは、つい先月のこと。


家族が……なんて言っていられる立場にはもうないらしく、新規事業立ち上げメンバーとして呼ばれたんだって。多分これって、すごいこと。

 

お母さんは悩みに悩んで、お父さんについていくことを決めた。

私も一緒に行かないかって言われたけれど、学校もあるし、英語話せないし。何より、お兄ちゃんを1人残して日本を離れるのは嫌だったから、残った。



今まで住んでいた隣町の家は叔父さんに管理を任せて、私は学校の近くのマンションで一人暮らしをすることになった。


1人で暮らすなんて、せめてセキュリティがちゃんとしてるところじゃないと! とお父さんが言うので、高校2年生の私にはかなり身の丈に合わないマンション。

なんでもお父さんの古い知人が大家さんらしく、家賃なんかをちょっとだけ安くしてもらえたらしい。



「そうだ、ご挨拶行かなきゃ……」
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