危ナイ隣人
私が無駄に心配かけちゃったから……。



「……ずっと、怖かった。圭太を死なせた事実を痛感させられることが。

兄貴を死なせた男として、茜と関わる勇気もなかった」


「っそんなこと──」


「でも。目を覚さない茜の顔を見て、わかったんだ」



反駁しようとした私の声を遮って、ナオくんが言う。



「今の俺には、お前を失くすことが何よりも怖い」



絞り出したような細い声は微かに震えていて、より一層、腕に込められる力は強くなった。


私の肩に顔を埋めるナオくんの表情は、ずっと見えないまま。



今、どんな顔してるの?

私はあなたよりコドモで、こんなの初めてだからわかんないよ。


今の言葉を、どう受け止めたらいいの?

素直に受け取ってもいいの?


ずっと握っていてくれた手を、あなたの背中に回してもいい……?



「っ……!」



恐る恐る、両手がナオくんのぬくもりを掴んだ瞬間、ダムが決壊したみたいに涙が溢れて、止まらなくなった。


こぼれてもこぼれても波は次々に押し寄せて、私から視界を奪っていく。
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