危ナイ隣人
「都合のいいこと言ってることはわかってる。
お前を避け続けた俺に、こんなこと願う資格があるかもわからねぇ。

でも、こんな思いをするくらいなら……“今”から逃げて、お前を失ってしまうくらいなら。死んだ兄貴の友達としてじゃなく、1人の男として──お前の傍にいたい」



二度と会えないと思っていた。


今を生きながら過去を見つめていたナオくんは、未来を生きてほしいと願う私の手を取ってはくれなかった。


ナオくんにとって過去は絶対で、その過去の傷を抉る私は、ナオくんにとってナイフだった。

ナオくんの絶望を思い起こさせるトリガーだった。


だから、もう、会えないと。



「ナ……く……っ」


「ん」



喉の奥がひくついて、うまく言葉が出てこない。


ナオくんの掠れた声が耳元で響いて、鼓動がまた速くなる。



言いたいことがたくさんあるの。

聞きたいことがたくさんあったはずなの。


なのに、いざナオくんを目の前にすると、うまく言葉にできないね。
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