危ナイ隣人
「絶対にありえないと思ってたのにな。……今はもう、お前しか考えらんねぇや」



こつんとぶつけられたおでこ。

私の腕に添えられた手は、もう震えてはいない。


だからきっと、大丈夫だ。



過去を大事にして、私達は未来を歩いていける。

一点の曇りもなく、そう信じられる。



……けど、一つ不満は残るよね。女子として。



「不合格」


「……え?」


「私ははっきり言葉にしたのに、濁すなんてずるい」



至近距離でぎろりと睨んでやると、ナオくんが痛いところを突かれたように眉を寄せた。



「……言わなくてもわかっただろ」


「わかんないよ。大事なことはちゃんと言葉にしてくれなきゃ。ね?」



ほんとは不器用で口下手なことも、知ってる。


でも、はっきり言葉にしてほしいオトメゴコロも大事にしてほしい。



おでこを離して、おどけるように手で煽ると、ナオくんが恨めしそうな顔をする。


苦虫を十ほどまとめて噛み潰したような顔になって、それから。



「好きだ」



恥ずかしさを隠せないまま、それでも私の目を真っ直ぐ見据えてくれるナオくん。


合格! って私が言うと、ナオくんは呆れたように笑って、また私を抱き寄せた。





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