危ナイ隣人

揺ルガナイ希望

「本当に、もう大丈夫なのね?」


「大丈夫だって。お医者さんも言ってたじゃん、煙を吸って気を失ってたけど、後は寝不足が祟って眠ってただけだったって」


「そうは言っても……」


「検査も異常なかったし! ほんっとぉーに元気だから!」



遮光カーテンの隙間から差し込む西日が、白い壁をオレンジに染めている。


そんな様子を横目に、ウーロン茶の入ったグラスをテーブルの上にタン! と置く。

反対の手に持ってたグラスも、もう一つタン。


まだ訝しげながらも、私の強い口調に引き下がったのは、今朝の便で急遽帰国したお母さん。

お母さんの隣には、一緒に帰国したお父さんも座っている。



「とはいえ、本当にごめんなさい。お兄ちゃんの時のこともあるし……心配したよね」


「心配どころじゃないわ。茜までいなくなっちゃったら、どうしようかと……」



じわっと涙を滲ませるお母さんを見て、バツが悪くなる。


息子を亡くしたうえに、娘まで火事に遭って緊急搬送されて……2人がどんな気持ちで飛行機に飛び乗ったのか、想像もつかない。
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