危ナイ隣人
「家族に対しては人一倍甘えん坊だったのに、圭太がいなくなって、成長以上に大人びて振る舞うようになった。

それは……圭太の分までしっかりしなきゃと、背負い込んだからだろう？」



並んで座るお父さんとお母さんの視線も口調も、けして私を責めるものではない。


ただ優しい声色で、少し切なそうに、幼き日の私の心を紐解いていく。



──私がお兄ちゃんの分まで、しっかりしなきゃ。

扉の向こうから聞こえた2人の嗚咽に、私はそう誓って、“妹”だった私を封印した。


気付いて……たんだ……。



「一人暮らしをさせることになった時も、今回もそうだけど……自分のことより、人を優先するようになっちゃったわよね。

自分の言葉を飲み込んで、しゃんとしようとして……お友達といるところを見ても、弱さを見せようとはしてないなって、感じてた」


「例え俺達が指摘しても、茜は絶対に認めないだろうと思った。もはや染み付いた振る舞いが、うまく隠してしまうんだろうって。

どうしたものかと考え続けていた時……海外赴任が決まったんだ」



心臓がどくどくと跳ねている。


自分でも気付かぬうちに硬くなっていた仮面を、容赦なく剥がされているかのような。
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