危ナイ隣人
「一人暮らしをさせると決まったタイミングで先生に連絡して、3人で話し合って、そして決めた。2人を引き合わせる機会を作ってみようと。

……まぁ、たかだか隣人になるだけだし、関わりを持つことになるかどうかは、わからなかったけど」


「同じ傷を持つ茜と真木くんが出会うことで、2人の何かが変わればいいなって、希望と期待を込めてね」



そう、だったんだ……。

ナオくんだけじゃなく、私も……お父さん達に心配かけちゃってたんだ……。


今よりも幼い頃に被った仮面を、ずっと、ずっと、ずーっと被ってたら、本物になると思ってた。


いつか。ナオくんに言ったことがある。


自分の足で立っていられる人間になりたいんだって。

染みついた振る舞いが、お父さん達を寂しくさせていることはわかってた。

もっと甘えてほしいって思ってることも、知ってた。


でもまさか、私の深淵にある強がりを見抜かれていたなんて。

こんなふうにナオくんと出会うきっかけを作るほど、心配かけてしまっていたなんて……。



「そんなこんなで、真木くんが引っ越したいって言ったのを許さなかったんだ。ま、職権濫用と言えばそれまでだけどね」


「……なるほど。すげぇ納得しました」



ナオくんが苦笑いを浮かべながら息を吐く。


そういえば、あの雨の日、マンションを出て行くって言ってたっけ。

今ナオくんがここにいるのは、なるほど、そういった背景があったんだ。



「結果として、2人を引き合わせて正解だったね。

僕達が想像もしなかった形で出会って、僕達が想像しなかった形で圭太くんの死を乗り越えてくれた。


まぁ……御山くんにとっては、ちょっと予想外すぎる展開になったと思うけど」



悪戯な笑みを浮かべた大家さんに、今度はお父さんが槍玉に挙げられる。


首を捻って振り返ると、お父さんは少し居心地悪そうに顔をしかめていた。
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