危ナイ隣人
10メートルほど進んだところで、「あ」と何かを思い出したように声を上げたのはお母さん。


お父さんがピタッと足を止めたのと同時に踵を返し、つかつかとこちらに戻ってくる。

娘の私ではなく、ナオくんの前に立った。



え、何なに。

お母さんってば、たまに予測不可能なところがあるから、なんだか私が緊張しちゃう。

何を言うの、お母さん。


緊張する私をよそに、お母さんがじりじりナオくんに詰め寄る。



「茜のご飯、食べたことある?」


「え? ……あ、はい。あります」


「味、どうだった?」



突拍子のない問いかけに目を瞬かせたナオくんは、困惑しつつも真剣に答えてくれる。



「控えめに言って、最高でした」



親指を立ててキリッと言い切ったナオくんに、お母さんは、ぶはっと笑う。



「そっかそっか。それならよかった!」



1人で勝手に満足したような満面の笑みを浮かべて、今度こそ、2人の姿は夜の帳へ消えていった。





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