危ナイ隣人
「抱負とかってないの?」


「いきなり無茶な話題持ってくんね。もしかして、誕生日の決意表明する派?」


「何それ。しない派だよ」


「なんだ、しねぇのかよ」



俺もしないけど、と鯛のカルパッチョを口に含みながら言うナオくん。話を振っといて、なんだそれ。


スプーンでポタージュを掬って、口に運んでみる。


あ、よかった、セーフだ。焦げの味、しない。

あとは、後片付けを頑張るだけだな……。



「そうだなー……。そろそろ禁煙でも始めっかなぁ……」


「えっ、タバコやめるの!」



少し考えた素振りの後、ナオくんは抱負らしきものを口にする。

バカにしながらも、ちゃんと考えてくれたんだ。



「体が資本の仕事だし、体力的にもそろそろやめねーととは思ってたんだよな。ほら、ボクもうアラサーだし?」


「……実は根に持ってんのやめてよ。ごめんて」



何となくついているテレビの画面には、クイズ番組が映っている。


私にはさっぱりな問題ばかりだけど、頭の回転の早いナオくんは簡単に解いちゃうのかもしれない。

悔しいから、わかる? なんて、絶対に聞いてやんないけど。



「でも、禁煙ってそんなに簡単に出来るものなの?」


「どうだかなぁ。禁煙外来なんてものがあるくらいだし、中々一筋縄ではいかねーかもな」
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