危ナイ隣人
だよね。スパッとやめられたら苦労しないよね。


でもやっぱり、消防士って体を使う仕事だし、これを機にやめてほしい。

職業を抜きにしても、体によくないだろうし……。



ぐるぐると考える私の耳に、「まぁでも」とナオくんの平坦な声が届く。



「頑張りますよ。これからは茜もいることだしな」



…………。


ぬ……ぬあぁぁぁぁああぁああ!?

な、なんですか今の!



聞き間違いかと思うような台詞を耳にして、耳や顔に熱が集中するのを感じながら、首をぐりんと回す。

言った本人は全く照れた様子も見せず、ステーキに沿えたマッシュポテトを口に運んでいる。


普段通りのナオくんに、私だけが狼狽えていることを悟られたくなくて、また視線を正面に戻した。



想いが通じ合ってからも、今までと変わらなかった私達。

すぐにふざけるし、軽口も叩く。


でも、今のは……。



「心臓、もたないかも……」



“彼氏”として放たれた言葉が、私の心臓を暴れさせる。


その慣れない甘さに、くらくらした。





「……遠くね?」



ケーキを平らげ、洗い物も終えた後。

ソファーの淵に肘をついたナオくんが、訝しげに視線を寄越す。


その視線を右斜め前から感じつつ、声が上擦らないようお腹に力を込めた。



「そ、そうかなぁ? 今まで通りだと思うけど……」



あ、ダメだ。ちょっと裏返っちゃった。
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