危ナイ隣人
あちゃーと思いつつ、視線をテレビに向けたまま応えると、ナオくんは一層怪訝そうに声のトーンを下げた。



「いつもは隣座ってたじゃん」


「そ、そうだっけ?」



すっとぼけてみるけれど、意味がないことはわかってた。

案の定、感じる視線が鋭さを増す。



……えぇ、そうです。ナオくんが正しいです。

前は、隣に座ってました。


403号室のリビングには、L字の大きなソファーがある。

居候してた頃、私はこれに寝させてもらってた。


ナオくんが言っているのはそれに座る位置で、私はテレビ画面とは垂直の、ベランダに背を向けた1人掛けの方に座っている。

Lの短いほう、って言ったらわかりやすい? ……逆にわかりづらいか。


ともかく、私は今、ナオくんと不自然な距離をとっている。



「こ、こっち座りたい気分なんだもん。ナオくんも広くソファー使えるし、いいでしょ?」



今度はちゃんと裏返らずに言えたけど、とっても早口になってしまった。



うぅぅ、絶対怪しまれてる……。


でも、無理なんだもん! なんか急に恥ずかしくなっちゃって、真っ直ぐにナオくんのカオが見れないんだもん!



熱くなるほっぺに両手を当てていると、ギッとソファーのスプリングが跳ねる音がした。



「よくねーっつの」



……え?


少し怒ったような低い声と共に気配を感じて、ぱっと視線を上げると、



「……っ!?」
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