危ナイ隣人
「俺はお前より大人だから……まぁ、それなりに経験はあるけど。

こんなに大事だって思えるのは、お前が初めてだよ」



そう言ったナオくんは照れくさそうに笑って、表情を柔らかく緩める。


くれる視線が宝物を見るように優しくて、あったかくて。



「ん」



ナオくんが広げた両手に、ソファーから腰を浮かせて飛び込んでみる。


逞しい腕に包まれると、さっき掌に感じたリズムが少し速くなって、全身に響く。



「へへ。ドキドキしてる」


「言うなよ」


「だって、嬉しいんだもん」



私だけじゃなかった。

ナオくんも同じように思ってくれてた。


7歳って歳の差は絶対に埋められないと思っていたけど……案外、そうでもない?



「ナオくん。大好き」


「……うん」


「もう。またはぐらかす」



腕の中からナオくんを見上げると彼は眉間に皺を寄せていて、勘弁してくれ、と苦々しく呟いた。


あの時もそうだったけど……どうやらナオくんは、好きって言葉を口にするのが苦手らしい。

たった2文字なのに、待ってみても全然言ってくれない。


ま、いっか。言ってくれなくたって、伝わってくるから。



「もうやだ、なんて言うなよ。俺だって、結構ビビってんだ」


「……どうして?」


「どうしてって……そりゃ、7歳も離れてんだぞ。歳が近くて、もっといいヤツが現れたら、とか考えるじゃん」
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