危ナイ隣人
両手で顔を覆って、それでも右手の指先で持たれたままのカードには、お兄ちゃんの字で、
【京香へ Happy Whiteday.】
と記されている。
「ホワイトデー、って……」
しばらくの間の後、目を真っ赤にした京香さんが切れ切れに問いかけてくる。
応えたのはナオくんだった。
「あの年の3月14日……死んでしまった次の日に、圭太がお前に渡そうとしてたものだと思う」
絞り出したような声で伝えたナオくんは、眉間に皺を寄せて渋い顔をしている。
だけどそれは何かを堪えているからだってこと、今の私にはわかるよ。
「私もナオくんも、その箱の中身は知りません。でももし、京香さんさえよかったら……京香さんの手で、開けてあげてくれませんか」
カードの下の、ブランドのリボンが結ばれた小さな箱。
本来だったら、きっと、お兄ちゃんの手で大切に渡されるはずだったもの。
顎を小さく引いた京香さんは、恐る恐るといった様子で紙袋から箱を取り出し、綺麗なままのリボンに手をかけた。
「……アクアマリン」
落ちるようにこぼされたのは、箱の中で眠り続けていた石の名称。
遠い海をぎゅっと詰め込んだような、透き通った水の色。
「アクアマリンって……」
「3月の……私の、誕生石」
箱からそっと取り出されたシルバーチェーンのネックレスは、待ち侘びていたかのように外の世界の光を浴びて輝いている。
【京香へ Happy Whiteday.】
と記されている。
「ホワイトデー、って……」
しばらくの間の後、目を真っ赤にした京香さんが切れ切れに問いかけてくる。
応えたのはナオくんだった。
「あの年の3月14日……死んでしまった次の日に、圭太がお前に渡そうとしてたものだと思う」
絞り出したような声で伝えたナオくんは、眉間に皺を寄せて渋い顔をしている。
だけどそれは何かを堪えているからだってこと、今の私にはわかるよ。
「私もナオくんも、その箱の中身は知りません。でももし、京香さんさえよかったら……京香さんの手で、開けてあげてくれませんか」
カードの下の、ブランドのリボンが結ばれた小さな箱。
本来だったら、きっと、お兄ちゃんの手で大切に渡されるはずだったもの。
顎を小さく引いた京香さんは、恐る恐るといった様子で紙袋から箱を取り出し、綺麗なままのリボンに手をかけた。
「……アクアマリン」
落ちるようにこぼされたのは、箱の中で眠り続けていた石の名称。
遠い海をぎゅっと詰め込んだような、透き通った水の色。
「アクアマリンって……」
「3月の……私の、誕生石」
箱からそっと取り出されたシルバーチェーンのネックレスは、待ち侘びていたかのように外の世界の光を浴びて輝いている。