危ナイ隣人
「あいつがこんなもの買うなんてな。この袋の存在を茜から聞いた時……すっげぇびっくりした」


「私も、すごくびっくりしました。こんなものを贈る女性(ひと)が、お兄ちゃんにもいたんだって。それが、京香さんだったんだ……って」



しっかりと伝えられるよう、拳をぎゅっと握り締めて声に力をこめる。



「お兄ちゃんにとって京香さんは、特別だったんだと思います」



そうだよね? お兄ちゃん。

こんな素敵なアクセサリーを、ただの友達にあげるような人じゃないって、根拠を持って言い切れる。


いつもは大人で、余裕綽々のお兄ちゃんだったけど、きっと沢山悩んで、慣れなくて店員さんにも相談したりして、そうしてようやくリボンをかけてもらった。

京香さんに渡した時、一体どんな顔をしてくれるんだろうって想像しながら、クローゼットにしまったんじゃないかな。


私に見つかっちゃったら、何これー? って遠慮なく問いただされちゃうから、見つからないようにして。



「っうあぁぁぁあっ!」



いつもの綺麗な顔をしわくちゃにして、京香さんはついに声を我慢できなくなった。

10畳のリビングに、星が落ちるように彼女の声が響く。



「絶対京香のこと好きだろって、何回も聞いたんだけどさ。あいつ、ずるいんだよ。いっつも笑ってごまかして、答えねーんだ。

でも、今思えば……一番に京香に伝えたかったんだと思うよ。お前と同じように、関係性を壊すのが怖くて、なかなか言えなかったんだろうけど」
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