危ナイ隣人
あいつは絶対、お前が好きだった。

噛み締めるようにそう言って、ナオくんは愛おしそうにペンダントトップを眺めた。



紙袋の存在を打ち明けた時、ナオくんが言っていた。

様子を見ていてそうだという確証はあったけど、はっきりと聞いたわけではないお兄ちゃんの想いを、勝手に京香さんに伝えていいのかわからなかったって。

傍で2人の関係性を見ていたわけじゃない私も、このプレゼントを京香さんに渡してしまってもいいのか、少し不安だった。


2人で話し合って、お互いの意見をすり合わせて、ようやく迎えた今日。



「そっか。圭太、ちゃんと考えてくれてたんだね……」



頬を濡らしたまま咲いた笑顔の花に、同性の私も思わずドキッとしてしまう。


雫を拭う仕草でさえ、吸い込まれてしまいそうなほど、綺麗だと思った。



「あの年のバレンタイン、何かあったんだっけ」


「えへへ。うん」



ナオくんの問いかけに、京香さんが照れくさそうに頷く。


そういえば、お兄ちゃんのスマホに残ってたナオくんとのトーク履歴にも、そんな感じのことが……。



「バレンタインのチョコを渡す時にね、ちょっと、私が拗ねちゃって。それから、少し気まずかったの。意地になって、連絡もとらなくて」


「あぁ。圭太も似たようなこと言ってた」


「ホワイトデーのお返しを渡すからって、当日の予定を取り決めてさ。私、何言われるんだろうってドキドキしてたんだけど」
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