危ナイ隣人
一旦言葉を切って、慈しむようにネックレスが掲げられる。



「こんな素敵なプレゼントと一緒に、私の想いまで成就させようとしてくれてたなんて……圭太ってば、罪なやつね」



アクアマリンに反射した光が涙と重なって、幻想的な美しさをまとっている。


浮世離れした光の屈折があまりに綺麗で、儚くて、胸が苦しくて痛い。



「ありがとう、茜ちゃん、直也」


「いえ、そんな……」


「今もまだ圭太のこと大好きで忘れられないけどさ、ようやくちょっと、前に進める気がする」



京香さんが咲かせた笑顔には、読み取るのも困難なほど沢山の感情が入り混じってる。


でも、読み取れなくてもいいんだ。

それらは全部、これから京香さんが一つずつ昇華していくものだから。


その過程で支えが必要だと彼女が思うなら、その時は力になれるよう全力を尽くそう。


いつか、京香さんがしてくれたように。





「やっぱ、渡して正解だったな」


「そうだね」



京香さんを駅までお見送りした後。

403号室に帰ってきた私達は、ソファーに並んで腰かけ、電源の切れたテレビをぼうっと眺めていた。



「あんなに綺麗な京香さんに想われ続けるなんて、お兄ちゃんも隅に置けないね」


「お前のお兄さん、結構おモテになってたぞ。まぁ、俺には負けるけど」


「あらやだ、ナオくんってば寝言言ってる。よっぽど疲れてるんだなー」
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