危ナイ隣人
いつものように流してやろうとすると、ナオくんの目がギラリと光る。



「……寝ぼけてるから、何してもいいよな?」


「え」



ふざけた私ににょきっと伸びてきた手は、そのまま脇下に滑り込まされ。



「ぎゃーっ! やめてよっ」


「うるせー、さっきも京香と結託しやがって」


「冗談じゃんかっ」



体を捻らせて逃げようにも力で勝てるはずもなく、ひたすらこしょこしょ、こしょこしょ、されるがまま。


くすぐったい! 無理! ギブアップ!

声にならない声をあげて、ようやく解放される。……死ぬかと思った。



「わっ」



ソファーにへばる私の体をナオくんの腕がいとも簡単に持ち上げて、体を反転させられる。

そのままナオくんの足の間に座らされ、後ろからホールドされる形になった。


こういうこと軽くやってのけちゃうの、ずるい。



「もうすぐ夏休み終わりだろ。ちゃんと宿題やったのか」


「やったよ。英語、超難しかった」


「3年だし、受験を考慮した内容になってんのかもな」


「そうかも。わかんないところあったら、聞いてもいい?」


「おう。覚えてたら教えてやる」



そんなこと言って、聞いたらスラスラ解いちゃうくせに。


賢くて体も使えて、こう言うのは癪だけど顔もいいって、冷静に考えるとこの男は何者なの?



そんなことをぼんやり思っていると、目の前に回された腕に、薄くなってはいるものの5センチ以上もある跡を見つける。



「あれ。これ……傷跡?」


「ん? あぁ、昔、仕事中にちょっとな」
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