危ナイ隣人
やばい! 非常にまずい!


10月に差し掛かった今日この日まで、ナオくんにはうちのクラスが劇をするって言わずに来た。


文化祭? そんなのとっくに終わりましたよー。

うちのクラスは大した出し物してませんよー。だって受験生ですからねー。


って、そういうスタンスでいようと思ってた。の、に!



「そういや、茜のクラスは何すんの?」



ほら来た! 来てしまったよ、この問い!


正直に答えるなんて無理! 

劇でメインの役柄をやるんだって言ったら、絶対になんで早く教えなかったんだって疑われる。


そしたら見に来ちゃうかもしれないし、キスシーンのことを言おうものなら、どんな反応をされるやら。


ナオくんは大人だし、案外何にも思わないのかもしれないけど……。


私が嫌だ。

ナオくん以外の男の人と、フリとは言え、そういうシーンをするって……知られたくない。


でも、教室で出し物をするなんて嘘は、すぐにバレちゃいそうだし……。



「う……うちのクラスは、舞台発表だよ。って言っても、みんな受験生だし、あんまり大したものじゃないけど……」


「へぇ。お前はなにで出んの?」


「私は裏方だから、舞台には出ないよ。衣装係だもん」



口から出まかせ。噓八百。

ピンチに陥って、こんなにスラスラ嘘をつけちゃうなんて……私、本気でマカデミー賞狙えちゃうんじゃない?

向いてるかもしれない、俳優業。それか、胡散臭い詐欺師か。
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