危ナイ隣人
「公演時間も、1番目なの。早い時間だし、私がいるからってうちのクラスの発表は見ないでいいよ」



ここまで言えば、ナオくんもわざわざ講堂まで舞台を見に来たりしないだろう。

実際は、お昼前の時間帯に割り振られてるんだけど……。


墓穴を掘ってしまわないうちに、方向転換を試みる。



「っていうか、ナオくんが高校にいるって変な感じだね。想像つかない」


「俺にも一応、高校時代あったんだぞ。今だって制服着こなす自信あるわ」


「ほんと? そういえば、当日、どこかのクラスが制服の貸し出しするらしいよ?」


「え」


「ナオくんの制服姿、楽しみにしてるね」



語尾にハートをつけて言うと、ナオくんは苦笑いを浮かべて再びマグカップを呷った。








衣装合わせやセットの確認、通しで行ったリハーサルを終え、いよいよやって来てしまった10月中旬。文化祭当日。



「今日、ほんとに真木さん来るの?」


「……朝、10時くらいに行くってLI●Eが来ました」


「うっそ、大ピンチじゃん」



朝礼前の浮足立つ教室の片隅で、声を潜めた真帆とくるみと、作戦会議。


……って言ったって、有効な作戦があるわけではないんだけど。



「真木さん、お友達と来るんでしょ? 別行動なら、講堂に来ない限りは茜が劇に出てても怪しまれたりしないよね?」


「うん。じっと演劇見るようなタイプでもないし、大丈夫だとは思うんだけど……」
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