危ナイ隣人
「茜です。御山茜」


「アカネ。オッケー、茜な」



調子狂うなぁ。

初対面の時からわかってたけど、こういう余裕を見せられると改めて思う。

学校にいる男子達とは違う、やっぱりこの人はオトナなんだ。


部屋はこんなに汚いのに。フツーにセクハラ発言連発するのに。

人のこと、Aカップとか平気で言うのに!!!



「真木さんは、名前なんて言うんですか?」



自分がコドモだってことが悔しくて、敵うわけなんかないのにちょっと張り合おうとしちゃったりして。


そんな私に気付くことなく、お隣さんはさらりと答える。



直也(なおや)


「なおや……」



真木直也。知らない名前。今この瞬間まで、知らなかった名前。


口にしてみたけど、なんか、やっぱり、変な感じ。



「直也ってさ、真っ直ぐ生きてる俺に、ぴったりの名前だろ?」


「わァ。そのジョーク、すっごくおもしろいね」



パチパチと渇いた音をたてて手を叩くと、お隣さんは少しだけ目を丸くして、すぐに恨めしそうに私を睨みつけた。



「てめ……。随分言うじゃねーか」


「だって。素でいろって言ったの、そっちでしょ?」



いよいよ遠慮がなくなってしまったけど、それでいいって言ったのはこの人だもん。
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