危ナイ隣人
「な、お……」


「ゴメンて。怒んなよ」


「はぁ? 怒るに決まって──」


「身長なんか小っせぇまんまでいいからさ。いっこだけ……情けない俺のワガママ受け止めてくれねぇか」



今度はナオくんが私の肩に顔を埋めて、掠れた声が優しく鼓膜を震わせる。


吐息交じりの、いつもより甘い声。



ずるいよ。

こんなの……頷いちゃうに決まってるじゃん。



「さっきはあんな風に言ったけど……あいつだけは、嫌だ」


「あいつ?」


「ローラ役の、あの無表情イケメン」


「ローラって……塚田くん!?」



ここで塚田くんの名前が出てくるとは思わなくて、思わず声を張り上げてしまう。

と、心なしか拗ねたような声色が返ってきた。



「仲いいだろ、あいつと。何回か見たことある」


「仲はいい、けど……。塚田くん、私とナオくんが付き合ってるって、知ってるよ?」


「知ってるのと理解してるのとでは違うんだよ」



これは、もしかして。

ううん、もしかしなくても……嫉妬、ですか?



「お前にとってあいつは、どうでもいい相手じゃないだろ。それがなんか……すっげぇやだ」


「っ!」


「仲良くするなとまでは言わねぇよ。けど、お前は俺のものだって自覚して接してほしい」



抱き締められたまま、顔だけ振り向く。

振り向くと、頬をほんのりと赤く染めたナオくんがいた。

今までに見たことのない、可愛い恋人。


こんな甘い束縛、振りほどく理由がない。



「……わかった、受け止める。ちゃんと、肝に銘じとく」


「ん」
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