危ナイ隣人
ナオくんの表情が、ふっと綻ぶ。


お互いの吐息が伝わってしまうほど、とっても近い距離。

あともう少しで触れてしまいそうな。



お互い何かに捉えられたように見つめ合って、言葉を失って。


ナオくんの瞳が迷いに揺れたのを見て、先に沈黙を破ったのは私の方。



「いいんじゃない、かな」


「いや……でも」


「イマドキ、小学生もしてるって聞くよ」


「まじかよ」



最近のガキはませすぎだろ、とナオくんが苦々しく吐き捨てる。



私も、聞きかじった話だから真偽はわからないけど。そんな情報を口にしてまで、繋ぎ止めたいと思った。


きっと、それが答え。



「……いいのか」


「受け止めるって、さっき言った」



戻らない覚悟ではっきり言うと、次の瞬間、唇にぬくもりが触れた。


劇の時とは違う……確かな感情を帯びた熱。



優しいのに、どこか乱雑で。

嬉しいのに、どうにかなってしまいそうなほど苦しい。


キスって、こんなにも特別なものなんだ……。



「……っ」



体を翻らせて、降りしきる口づけの雨を受け止める。


重なっては離れて、離れては触れて。

気付けば壁に背中がくっついて、ずるずると足の力が抜けていく。


それでもなお、雨は止まない。



初めての口づけが、この人で本当によかった。


喧騒を遠くに聞きながら、愛しい人がくれる情熱を受け止め続けた。





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