危ナイ隣人
「疲れてんだろ、座ってろよ」


「いいじゃん。見学に来た」


「なんだそれ」



ポットに水を入れてセットするナオくん。


その様子を見届けてから背中にぽすんと顔を埋めに行くと、心がふっと安らぐ。



「だいぶ疲れてんだろ、お前」


「んー? そんなことないよ」


「嘘つけ。声が眠そう」



うーん、バレてる。


しょうがないか。いつも、403号室で過ごした後は、眠くなったタイミングで私が404号室に戻る流れだもん。


たまーに寝落ちしちゃいそうになることはあるんだけど、ナオくんはそれを許さない。

叩き起こして、なんなら担ぎ上げてでも、必ず夜は私を404号室へと帰す。


頑なに私を泊まらせようとしないのは、大人としての分別……ってやつなのかな。



「帰ったらもう寝ろよ。体壊すぞ」


「大丈夫だよ」


「あのな。これ、盛大なフラグ建設だからな。そうやって言ったやつ、百発百中でぶっ倒れんだ」


「何それ」


「いいから聞いとけ。ありがたーい先人の教えだぞ」



ということは、ナオくんはしっかりフラグ回収したことがあるんですね。


フラグ立てた相手、もしかするとお兄ちゃんだったりするのかなぁ。



「……わかったよ。ココア飲んだら、戻って寝る」


「あぁ。ヘソ出して寝るなよ」


「腹巻き巻いて寝るから、お気になさらず」



短いナオくんの笑い声が、けして広くないキッチンスペースに響く。
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