危ナイ隣人
カチッとポットのお湯が沸く音がして、その後すぐに、甘い匂いが空間に広がった。



「ナオくんも飲むの?」


「まさか。俺はこの前買ったほうじ茶」


「渋っ」


「うるせ、ほうじ茶なめてると痛い目見るぞ」



ふぅん。私、ほうじ茶ラテとかもわざわざ選んで買わないから、味ぴんと来ないな。

後でちょっと貰おっと。



「ほら、あぶねーから離れろ」



言われて、渋々離れる。

2人分のマグカップを持って先にリビングに戻ったナオくんの後ろを、とことこ歩いて追いかけた。


そんな私を見て、マグカップを置いたナオくんがまた歯を見せる。



「よっぽど眠いんだな」


「……なんで?」


「お前からくっついてくる時は、大抵、眠い時だからな」



口調はいつもみたいに軽いのに、隣に腰かけた私の髪を撫でる手は優しい。


この、見透かされてる感。悔しい。


口をきゅうっと結んで、ナオくんが淹れてくれたココアに口をつけた。……あまい。



「そういえば、明後日、公休とれたんだ。1日のどこかで時間とれるか?」


「……明後日、って」


「9日。お前の誕生日だろ」



さも当然のことのように言われて、重たかった瞼はぐっと持ち上がった。



「お、覚えててくれたの?」


「んなびっくりした顔するか? 俺を何だと思ってんだよ」


「だ、だって……」



今日まで、そんな素振りなかったんだもん。
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