危ナイ隣人
思い切って、ナオくんの逞しい腕の中に飛び込む。


この両手は、これからも沢山の人を救っていくんだ。



「ナオくん、好き。たとえナオくんが頭つるつるになっちゃっても好き」


「なんだそれ。俺はハゲてもかっこいいに決まってるだろ」


「もう。バカ」



ナオくんに力強く抱き締められながら、クスクスと笑い合う。


ナオくんも小さく笑って、やがて、少しの沈黙が落ちた。



「…………」


「…………」



少し緩められた腕の中で、顔を上げる。

僅かな熱を持ったナオくんの瞳には私が映っていて、私はそっと目を閉じた。


瞬間、唇に温もりが落ちてくる。

初めは少し触れるだけ。次は、少しだけ長く。その後は、もっと長く。



何度も降ってくる口づけを、私はぎゅっと目を瞑って受け止めた。

……というか、受け止めるのに精いっぱいで、息をするのもやっと。



遂にめまいがし始めた頃、私の肩に、こてんとナオくんの頭が乗せられた。



「あーもう。こんな時、歳の差が恨めしくなるな」


「へ……?」


「頼むから、早く高校卒業してくれ」



顔を伏せたまま、ナオくんが掠れた声でそんなことを言う。


少しの間を置いてその意味を理解してしまった私は、顔だけじゃなく、耳まで真っ赤に染め上げた。









「わっ、もうこんな時間!?」



ベッドサイドに置いたスマホの画面を確認して、私は慌ててベッドから飛び起きる。

布団から出ると、まだ少しだけ肌寒い。
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